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『悪魔に赦しを乞え』


by yakumoMkII
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辞世の書 信愛Ⅱ

俺の目論見は見事に的中した
ビデオ屋の仕事ってのはアホみたいに楽だった

ただ一つだけ気になる点ってのがあって
実はシンアイの面接には俺ともう一人
地元の友達と2人で受けに行ったのだ

その後、友達に受かりましたという電話があったらしいが
そいつは他のやりたかった仕事に受かっていたので
丁重にお断りをしたらしい

で、どうも話を聞く限りでは
どうやら俺に採用の電話がかかってきたタイミングってのが
そいつが断った後みたいでね

もし、そいつが断らなかったら
俺はシンアイで働いていなかったのかもしれない

って、ちょっと待て
つーことはあれか
シンアイさんでは俺よりもあの野郎の方が戦力になるとでも
判断したのか?

ふざけるなよ!!
その時点で俺には社会人経験もあるし
サービス業でのバイト経験も数知れずだぞ!?
そんな俺よりも、あのろくに仕事経験もねー
ド糞フリーターの方が仕事が出来そうに見えたんか?あー!?

バカじゃねーのか!?このド低脳野郎が!!

てめーらの認めた
あのピザ野郎共々地獄に落ちやがれ!!クサレ外道が!!!

なーんてね
冗談ですよ。冗・談

そもそも友達の悪口を言うなんて俺のキャラに似合いませんし
ね?テケレツ君

まあ、シンアイで働き始めて最初の一ヶ月は
とても真面目に働いてましたよ

空いたシフトに積極的に入ったり
どうすれば来店されたお客様に満足してもらえるかを
日々、色々と考えては提案したりとかね

しかし、一ヶ月を少し過ぎたあたりに
俺よりも前に入っていたバイトの人が辞めてしまうので
新しく募集をかけたんですよ

その時丁度、俺がいる時間帯に
「バイトの募集を見たんですが」って
わけー兄ちゃんが来たんですが、これがまた酷い

耳にはでっけーピアスをして
格好もなんか「若さを前面に押し出しましたー」
みてーな、くっせー格好して

髪型なんざ
緑色でツンツンしたスパイクヘアーって
まるで量産型ザクの左肩みたいなんですよ

どうせ話し方も痴呆みたいなんだろうなと思っていたのですが
意外にも丁寧な喋り口だったんで

「いやー、その髪型
 格好良いっすねーーー」

なんて口走ってしまったが
もし俺が承太郎だったら

「よく見たら、やれやれ趣味の悪い髪型だったな……
 だが、そんなことはもう気にする必要はないか…
 もっと趣味が悪くなるんだからな……顔面の形の方が……」

間違いなくそう言ってぶん殴ってましたね

「店長の方に伝えておきますので」

俺がそう伝えると
そのザクの左肩は

「お願いします。」なんて言って帰っていきやがりました

一応、店長に伝えたのだが

あの客を、いや客だけじゃない
全てをなめくさったような髪型と
むかつくほどに自己主張されたでっけーピアスに
余裕ぶっこいた服のセンスをしてるような奴が
万が一にも受かるはずねーだろうと思ってましたよ

そもそもああいう爽やかなやつに
シンアイというくすんだドブネズミ色は似合わねーんだよ
変にシンアイという色をライトブルーとかに変えようとかされたら
うざってーしね

ところがそれから3日後くらいだろうか
俺がいつものように出勤をして仕事をしようとしたら店長が

「今日から新しく入ったタカシーノ君
 八雲君と同じ時間帯に入るから色々と教えてあげてね」

そう言って新人を紹介してくれたのだが
そいつをみて愕然としてしまった・・・・・・

何とその新人とは、あのうざそうなクソ大学生だったのだ!!!!

店長、気は確かか?気でもふれたのか!?

何を考えてこんな奴を採用したんだ!?

まあいい、どうせ軽薄そうな奴じゃないか
くだらねー理由とかですぐに辞めるだろう
もし、こいつが居続けようとしたとしても
周りの奴らと結託をして辞めさせる方向に持ってきゃーいいだけの話だ

いいか、これだけは覚えておけ・・・・・
 
「シンアイにはてめーのようなやつは無用だ」

そう心に思いながら
とても穏やかな表情でニコっと笑って

「よろしくね」

そう言って握手を求めました

八雲、20代前半 

タカシーノ、10代後半の夏の出来事でした
by yakumoMkII | 2007-08-31 07:53 | 短編小説